
生成AIを業務で使い始めるとき、最初から細かな規程を作る必要はありません。ただし、どこまで使ってよいかが決まっていないと、便利な使い方も安心して試しにくくなります。
前回、最初に試す業務を一つ選びました。今回は、その業務を試す前に社内でそろえたい3つの最低限のルールを紹介します。AIの回答は、そのまま使わず、人が内容を確認する前提です。
読了目安:約5分
POINT
今回のポイント
- 最初から分厚い規程を作る必要はありません
- 入力しない情報、人が確認する場面、使ってよいサービスとアカウントの3点を決めます
- 無料か有料かだけで安全性を判断せず、利用条件を確認します
禁止だけでは、実態を把握しにくくなる
帝国データバンクが2026年3月に行った調査では、生成AI活用の懸念・課題を3つまで尋ねています。中小企業の49.7%が「情報の正確性」、32.1%が「情報漏洩のリスク」を挙げました。
心配だからと一律に禁止すると、会社が利用実態を把握しにくくなる可能性があります。まずは、公開済みの情報だけでできる定型的な文書の下書きなど、使ってよい範囲を小さく決め、相談できる状態をつくる方が現実的です。
最低限、3つを決めます
1.入力しない情報
個人情報、取引先から預かった非公開情報、社外秘資料は、試行段階では原則として入力しないと決めます。最初は、公開済みの案内文など、扱ってよいことが明確な材料だけを使うと判断をそろえやすくなります。
個人情報の入力が法律上一律に禁止されているわけではありません。ただし、本人同意なく個人データを入力し、サービス提供者が回答生成以外の目的で取り扱う場合は、個人情報保護法違反となる可能性があります。個別の扱いは、社内の責任者や専門家へ確認してください。
2.人が確認する場面
AIの出力は、そのまま社外へ出しません。特に、数字、固有名詞、法令や制度、見積書や案内文などの対外文書は、元資料と照らして人が確認します。
例えば、AIには会議メモの要約案を作ってもらい、決定事項、担当者、期限は会議メモの原文で確認してから共有する、と役割を分けられます。
3.使ってよいサービスとアカウント
業務で使ってよいサービスとアカウントを会社で決めます。個人用のアカウントで使うのか、会社が管理するアカウントで使うのかが曖昧なままでは、利用条件や設定を確認しにくくなります。
利用規約とプライバシーポリシーを確認し、入力データの機械学習利用、保存・保持、管理者設定の扱いを確認します。判断に迷う情報を持ち込む前の相談先も決めておきましょう。

3行で始める社内共有文の例
最初は、試行する業務に必要なことだけを短く共有します。次の文は自社ルールのたたき台です。実際の契約、利用サービス、扱う情報に合わせて、責任者が内容を確認してください。
1.顧客名や取引先の非公開情報、社外秘資料は、生成AIへ入力しません。
2.数字、固有名詞、法令・制度、対外文書は、担当者が元資料を確認してから使います。
3.業務利用は、会社が指定するサービスとアカウントに限ります。迷ったときは、[相談先]へ確認します。
このまま正式な規程にする必要はありません。まずは、今回試す業務に関係する人へ共有し、実際に迷った場面があれば文を見直します。
利用環境を決めるときの確認項目
無料か有料かだけで、扱える情報の範囲は決まりません。実際に業務で使うサービスごとに、現行の利用条件と管理機能を確認してください。
- サービス名とアカウント:会社が管理するアカウントか
- 利用条件:利用規約とプライバシーポリシーを確認したか
- 入力データの扱い:機械学習利用、保存・保持の条件を確認したか
- 相談先:判断に迷う情報を入力する前に、誰へ確認するか
デジタル庁のガイドラインは政府職員向けの資料ですが、入力情報、出力の確認、利用環境、相談先を整理する考え方は、社内で検討する際の参考になります。民間企業に直接適用される規程ではありません。
最初は一つの業務で、数回試します
公開済みの情報だけでできる定型文の下書きなど、一つの業務に限って試します。数回使った後に、入力してよい情報の範囲、確認にかかる時間、相談が必要だった場面を振り返り、続けるか、条件を変えるかを決めます。
ルールは、最初から完成させるものではありません。実際の仕事に合わせて、必要な範囲から育てていきましょう。
THIS WEEK
今週のアクション
AIに入力してはいけない情報を一つ決め、
社内で共有してください。
たとえば、「顧客名や担当者名を含む情報は入力しない」から始められます。その後、取引先の非公開情報、社外秘資料についても、相談先を決めたうえでルールに加えましょう。
次回予告
次回は、AIで作業が早く終わったあと、その時間を仕事の成果につなげる方法を取り上げます。浮いた時間の使い道を先に決める簡単な工夫をご紹介します。
参考情報
組合員の皆さまへ
生成AIの利用は、禁止するかどうかの二択ではありません。まずは、入力しない情報と人が確認する場面、使ってよい利用環境を決め、試せる範囲から始めてみてください。