
「AIを導入した方がよいとは思うけれど、何から始めればよいか分からない」。そんなとき、サービスを選ぶ前に確認したいのが、社内での使われ方です。会社として正式に導入していなくても、文章の下書きや情報整理に、個人で生成AIを使っている人がいるかもしれません。
「中小企業のAI活用 入門」第1回では、調査から見える中小企業の活用状況と、最近公表された事例を紹介します。そのうえで、社内での聞き方、確認結果の残し方、次の対応までを整理します。
読了目安:約5分
POINT
今回のポイント
- 導入率は参考にしつつ、自社での使われ方を確認します
- 役立つ使い方と、入力情報の扱いを一緒に聞きます
- 確認結果を、安心して使える範囲の検討につなげます
中小企業のAI活用状況
生成AIの業務利用は、約3社に1社
帝国データバンクの調査(2026年3月)では、回答した中小企業の32.4%が、生成AIを業務で「非常に活用」または「やや活用」と答えています。
生成AIは、指示に応じて文章などを作るAIです。この数字は回答企業の業務での活用状況を示すもので、会社が共通のサービスを契約している割合とは限りません。
AI全般の導入は、約5社に1社
中小企業基盤整備機構の調査(2025年11〜12月)では、AIに関する設問に回答した中小企業1,647社の20.4%が、全社または一部業務にAIを導入していました。画像認識や需要予測なども含む数字です。
※2つの調査は、対象企業やAIの範囲、質問が異なります。
これらの数字だけで、自社が出遅れているかどうかを決める必要はありません。まずは「どの作業で役立ちそうか」「すでに試している人がいるか」を確かめる方が、次の一歩を選びやすくなります。
個人で使うAIも、業務で使えば確認が必要です
2026年9月3日、RIZAPは、社員が個人で使用する外部生成AIに、顧客情報を誤ってアップロードしたと発表しました。特定保健指導に関するデータの集計作業中に発生した事案です。
同社は、情報がAIの学習に使われた可能性や、サービス事業者以外の第三者に閲覧された可能性はないと説明しています。一方、サービス事業者の役職員等が閲覧できる状態だった可能性は、9月3日の発表時点で確認中としています。
この事例から、自社では会社が契約したサービスだけでなく、個人で使っているサービスも確認対象にしたいところです。「AIを使っているか」に加え、「どのような情報を入力しているか」まで聞くことが大切です。
出典:RIZAP公式発表(2026年9月3日)。本件の説明を、他のサービスや契約にも共通するデータ取扱条件として捉えないでください。
社内で確認したい3つのこと
自社で安心してAIを活用するためにも、まずは「誰が・何を・どの仕事に使っているか」を聞いてみましょう。
1.誰が使っている?
仕事で生成AIを使ったことがある人を確認します。利用を責めず、役立った使い方や困った点を聞きましょう。
例えば、「安全に使う方法を考えたいので、仕事で試したことがあれば教えてください。便利だった点も知りたいです」と切り出してみてください。利用の有無だけで終わらず、現場が何に時間を取られているかも聞くと、活用する業務を選ぶ手がかりになります。
2.何を使っている?
サービス名と、アカウントが個人用か、会社で用意したものかを確認します。
同じサービス名でも、使っているプランや設定を確認する必要があります。「有料だから大丈夫」と決めず、社内の確認担当者が、入力データの保存や学習利用の扱いを公式情報で確かめましょう。聞き取りでパスワードを集める必要はありません。
3.どの仕事に使っている?
会議の要約や文章の下書きなど、使っている作業と入力情報の種類を聞きます。個人情報や取引先の非公開情報を入力していたら、その入力をいったん止め、社内で扱い方を確認しましょう。
「メール文案を作る」という用途だけでなく、「公開済みの商品説明を使うのか、顧客とのメールを貼り付けるのか」まで確認します。同じ作業でも、入力する情報が違えば、確認すべき点も変わります。

確認結果は、短いメモで残しましょう
最初から詳しい報告書を求める必要はありません。次の項目を、作業ごとに一組ずつ記録する方法を提案します。
- 利用する部署・担当:後から確認できる範囲で記録
- サービス・アカウント:サービス名、個人用か会社用か、プラン
- 用途:文章の下書き、要約など
- 入力情報の種類:公開情報、社内資料、個人情報を含む情報など
- 役立った点・困った点:下書きは早いが、事実確認に手間がかかる、など
例えば、「営業担当/サービスA・個人用/商品紹介文の下書き/公開済みの商品説明/表現案は役立つが、数値は確認が必要」という形です。これは記録方法を示す架空の例であり、特定サービスの利用を勧めるものではありません。
メモには顧客名や入力した文章そのものを転記せず、情報の種類を残します。記録を確認する担当者と共有範囲も決めておきましょう。
聞いた後は、役立つ使い方と要確認の使い方を整理します
公開情報だけを使った下書きなど、社内で共有できそうな使い方が見つかったら、入力情報の扱いと出力の確認方法を確かめたうえで、試す候補にします。AIの回答はそのまま採用せず、人が内容を確認する前提です。
入力情報の扱いが分からない場合は、その情報の入力を保留し、確認する人を決めます。すでに個人情報や非公開情報を誤って入力した可能性がある場合は、利用者だけで判断せず、社内の責任者へ速やかに報告してください。
まだ誰も使っていなければ、それも確認の結果です。無理に利用を始めず、文章作成や情報整理など、負担の大きい作業を聞いておくと、今後試す対象を考えやすくなります。
THIS WEEK
今週のアクション
「仕事で生成AIを使ったことはありますか」
まずは聞いてみましょう。
使っている人がいたら、上の3項目を聞いてみてください。
次回予告
次回は、他社の取組を参考に、AIを試す作業を一つ選ぶ方法をご紹介します。
参考情報
組合員の皆さまへ
社内の利用状況を知ると、情報の扱いで見直すべき点と、他の担当者にも役立ちそうな工夫の両方を探せます。まずは身近な担当者に聞き、自社で安心してAIを使うための材料を集めましょう。