
ホームページのリニューアルを相談して、複数の制作会社から見積もりが届いた。ページ数は近いのに、合計金額が違う。どちらを選べばよいか、迷うことはないでしょうか。
比較の出発点は、その金額で「何を、どこまで頼めるか」を確かめることです。原稿を渡して制作してもらう場合と、原稿づくりから相談する場合では、必要な仕事が異なります。
この記事では、中小企業や個人事業主が見積もりを受け取ったとき、または依頼前に使える確認の仕方を紹介します。範囲をそろえた後も、提案内容や進め方を確認する必要があります。今回は比較の入口として、作業範囲を取り上げます。特定の金額を相場として示すものではありません。
最初に「何を直すための見積もりか」をそろえる
見積書を並べる前に、今回解決したい困りごとを短く書いてみましょう。
例えば「対応地域を電話でよく聞かれるので、サービス案内で見つけやすくしたい」という目的なら、地域の説明や案内の位置を直すことが相談の中心です。サイト全体を作り直す必要があるかは、その目的と現状から検討します。
第22回では、困りごとについて仮説を立て、アクセス記録・お客様の声・実際のページで確かめる方法を紹介しました。既にメモがあれば、見積もりを依頼する各社へ同じ内容を渡してください。
まだ調べ切れていなくても、「対応地域を分かりやすくしたい。今のページで直せるかも相談したい」と伝えて相談できます。原因や必要な改修を、発注側だけで決め切る必要はありません。
ページ数が同じでも、自社が受け持つ仕事は変わる
次は、どこまで自社で準備し、どこから制作会社へ任せるかを見ます。以下は比較方法を説明するための架空例です。特定の会社や料金を表していません。
| 比べる項目 | A案の条件例 | B案の条件例 |
|---|---|---|
| サービス紹介の原稿 | 自社が完成原稿を渡す | 担当者への聞き取りを基に制作会社が原稿案を作る |
| 掲載する写真 | 自社が使用できる写真を選んで渡す | 必要な写真を相談し、撮影を依頼する |
| 公開後の文章修正 | 自社の担当者が更新する | 別途、更新を依頼する範囲を決める |
A案とB案は、自社が担当する仕事も異なります。使える原稿・写真があり、準備の時間も取れるならA案が合うかもしれません。素材が足りず、社内だけでは準備が進まないなら、B案の支援が必要かを検討できます。
どちらの案も、自社に必要な範囲と予算が合うかが判断の軸です。依頼費用に加え、自社の準備時間や継続して更新できるかも見ておきましょう。
見積書の「一式」は、作業と分担で確認する

項目名が同じでも、含まれる作業がそろっているとは限りません。「制作一式」「デザイン」「公開作業」など、内容が分からない項目は、その費用で誰が何をするかを聞いてみてください。
次の表は確認候補です。すべての作業を依頼する必要はありません。自社に関係する行から使い、各社の回答を見積書やメールと合わせて残します。
| 確認したい項目 | 制作会社に聞くこと | 自社で整理しておくこと |
|---|---|---|
| 原稿・写真 | 支給素材を載せるだけか。文章作成や撮影も含むか | 使える文章・写真、準備する担当者 |
| ページ・機能 | どのページを直すか。フォームや更新機能をどこまで作るか | 今回直したい場所と必要な機能 |
| 修正の範囲 | 確認・修正の回数と対象は何か。途中で要望が変わった場合はどう扱うか | 社内で確認する人と、意見をまとめる担当者 |
| 公開前の確認 | スマートフォン表示、リンク、フォーム送信は誰が確認するか | 自社でも確認する内容と対応できる日 |
| 公開作業 | 現在のサイトからの切り替えは含むか。URL変更がある場合は何を行うか | 現在の管理担当者と、止めたくない機能 |
| 公開後の対応 | 不具合の修正と、文章追加などの更新依頼をどう区別するか | 自社で更新したい部分と外部へ頼みたい部分 |
| 別途かかる費用 | サーバー等の利用料や追加作業は、何が・いつ発生するか | 初回と継続の支出として確保できる予算 |
例えば「フォームを設置する」だけでは、設置後に送信し、担当者のメールへ届くところまで誰が確認するか分かりません。作る対象と、確認する範囲をセットで聞くと、依頼後の分担を決めやすくなります。
書かれていない項目があっても、すぐに対応範囲外と判断しないでください。見積書の備考や提案書も確認し、それでも不明なら問い合わせます。
見積もりを頼む前に、依頼内容を1枚にまとめる
各社に違う内容を伝えてしまうと、届いた提案や見積もりの前提もずれてしまいます。相談前に、困っていることや依頼したい範囲を1枚にまとめ、同じ資料を各社へ渡してみましょう。
自社の目的や希望条件を伝え、制作会社に提案を求める資料を、提案依頼書(RFP:Request for Proposal)と呼びます。小さな改修の相談なら、最初から詳しい仕様書を作ろうとせず、次の7項目を整理するところから始められます。
- 困っていること・改善したいこと
- 今回直したいページや機能
- 自社で用意できる原稿・写真
- 制作会社に相談・依頼したいこと
- 現在のサーバー・ドメイン・メール
- 予算の目安・希望時期
- 公開後に自社で更新したいこと
以下は、これまでの対応地域の例を使った、簡易な依頼内容メモです。RFPを作るための出発点として、MICが説明用に作成した架空の記入例です。
依頼内容メモ(簡易RFPの記入例)
困っていること・目的:
対応地域を電話でよく聞かれるため、サイトで見つけやすくしたい。
今回直したい場所:
サービス案内ページ。全体の作り直しが必要かは相談したい。
自社で用意できるもの:
会社案内、対応地域の一覧、使用できる既存写真。
相談・依頼したいこと:
説明文と掲載位置の提案。原稿を整える作業も含まれるか、確認したい。
スマートフォン表示と、問い合わせ先までの確認範囲も示してほしい。
現在のサーバー・ドメイン・メール:
サーバー・ドメインの契約先と管理担当者は確認中。
現在の会社メールを引き続き使いたい。
サーバーを継続利用できるか、移転が必要か相談したい。
必要な作業と、公開後の管理分担・継続費用を提案してほしい。
予算の目安・希望時期:
予算は検討中。必要な作業の内訳を見て相談したい。
公開時期も未定。作業期間の目安を教えてほしい。
公開後に自社で更新したいこと:
対応地域と営業日の変更。自社で更新できる方法を相談したい。
決まっていない項目は「検討中」「相談したい」で構いません。希望する予算の範囲や公開時期があれば、確定条件か目安かも添えます。何を達成したいかを先に伝え、実現する方法は制作会社の提案を聞きながら詰めていきます。
サーバーやドメインは、分かる範囲で契約先・管理担当者・継続利用や移転の希望を記入します。専門的な仕様を決め切る必要はありません。会社のメールなど、止めたくないサービスも伝えてください。パスワードなどの認証情報は、この資料には記載しません。
資料を渡すときは、「この内容を基に、対応する作業と自社で準備すること、別料金になる項目を分けて提案してください」と添えると、回答を比べる材料になります。詳しいRFPが必要かどうかは、依頼の規模や内容に応じて相談しましょう。
同じ質問を送り、分からないところを残さない
見積書の書式を全社でそろえる必要はありません。同じ質問への回答を、小さな一覧にまとめる方法もあります。
以下は、原稿作成の範囲を確認するための質問文の例です。自社の相談内容に合わせて使ってください。
サービス紹介ページの原稿について確認したいです。今回の見積もりは、当社が完成原稿を渡す前提でしょうか。それとも、担当者への聞き取りと原稿案の作成まで含まれますか。追加になる作業があれば、費用を決めるタイミングも教えてください。
回答は「含む」「別途見積もり」「自社で担当」「確認中」などに分けて残します。「確認中」の項目を、確認せずに「含む」「含まない」へ振り分けず、判断前に解消する点として扱いましょう。
例えば、次のメモなら、項目名が異なる見積書でも原稿作成の範囲を比較できます。これも架空の記入例です。
今回の目的:対応地域をサービス案内で見つけやすくする
比べる作業:サービス紹介の原稿づくり
A案:自社が完成原稿を渡す
B案:聞き取りと原稿案の作成を含む
自社の準備:既存の会社案内はある。Web用の原稿は未作成
次に聞くこと:既存の会社案内を使う場合の費用と、自社の準備範囲
機密情報や他社の提案書を丸ごと転送する代わりに、自社が求める作業を自分の言葉で伝えれば、条件の確認を進められます。
予算に合わないときは、目的に戻って範囲を相談する
必要な作業を確かめたうえで予算を超えるなら、今回行うことと、後で検討することを分けて相談します。
例えば、サービス案内の修正で困りごとを解消できそうなら、会社概要や実績ページの全面的な作り直しは後に回す案もあります。既存の文章・写真を活かせるか、自社で準備できる部分があるかも相談材料になります。
段階を分ける場合は、後の追加に何が必要かも聞いておきましょう。作業を分けることで、再度の調整や公開作業が必要になる可能性があるためです。
確認工程をどこまで残すか、自社へ移る作業を誰が担えるかも含めて検討します。目的に必要な仕事と予算を、同じ条件で比べるための相談です。
今週は、分からない作業を一つ確かめる
見積書が手元にあれば、内容が分からない項目を一つ選び、「この費用には、どこまで含まれますか」と聞いてみてください。
まだ見積もりを取っていなければ、上の依頼内容メモを使い、「自社で用意できるもの」と「任せたいこと」を一つずつ書くところから始められます。
見積もりを比べる目的は、必要な仕事と自社の負担を確かめ、予算内で何を進めるか決めることです。合計金額と作業範囲を合わせて、納得できる依頼内容を整理しましょう。
次回は、制作会社を選ぶときに、価格と実績以外で確かめたい進め方や支援の範囲を取り上げます。
参考情報
見積もりを頼む前に、依頼する範囲で迷ったら
「今のページを一部直せばよいか」「文章や写真は何を準備すればよいか」。依頼する範囲で迷う場合は、マルチメディア情報協同組合へご相談ください。
現在のホームページのURLと、改善したいことをお知らせください。今回のメモも、相談の材料にご活用いただけます。
ホームページ制作・リニューアルのお問い合わせフォームが開きます。